事例-17

平成21年9月

先行きに不安を感じていた甲社が、多角化戦略の手法としてM&Aを採用し、当金庫の良好取引先を株式譲渡の形式で子会社化したものです。

(1)多角化戦略の採用
 これまで順調な経営を続けてきた甲社は法令の改正による先行きに不安を感じ、多角化戦略を採用することにしました。甲社の経営資源に余力があるうちに、収益の柱となる事業部門の構築を考えたものです。多角化戦略として事業を立ち上げるより、時間の節約ができるM&Aを採用したものです。

(2)自社での被買収企業の探求
 当初、甲社は被買収企業を探索した候補企業がありましたが、買収の決心がつかずに当相談室へ相談がありました。現実的に被買収企業の情報量が少ないため、業況の安定した企業を探すのは困難であることを説明したところ、甲社は当金庫のM&A仲介相談サービスを利用することになりました。

(3)被買収企業乙社を紹介
 被買収企業乙社の経営は順調でしたが、代表者の病気療養が原因で、代表者の奥様が経営に参画することになりました。しかし、奥様も年齢に不安を感じており、従業員の雇用を守るためには乙社の経営を専門経営者に委ねた方が良いという考えを持っていました。

(4)多角化が目的のM&Aは難しい
 買収企業側の目的が「多角化」の場合は、M&Aが難しいとされています。なぜなら、買収企業側は被買収企業の業務について専門外であるため、今後の事業展開には被買収企業の従業員による協力が必要であり、当該買収行為に対する賛成を得なければなりません。しかし、M&Aの交渉は秘密裏に行われるために、被買収企業従業員の賛成を得られるかの確認が取れないのが、難しいとされている点です。
 本件では、基本合意契約後、速やかに主たる従業員に本件について報告しました。その方も全従業員の雇用がこれまでどおりであるならば、協力すると約束してもらえ、一気に交渉が進んでいきました。

(5)甲社、乙社ともに目的を達成
 買収企業側の「多角化」のM&Aは本件により短時間で達成されました。
乙社の代表者は、これを機会に退任することができました。また、乙社の従業員はより大きな企業の傘下に入ることで雇用の安定、確保が実現できたことになります。