事例-22

平成23年10月

 創業社長の急逝により、自社の主力事業を継続させるために同社の従業員を代表者とした法人を設立のうえ、事業譲渡しました。

 甲社(建材販売、不動産管理)は創業時より50年を経過し、小規模ながらも実質無借金の堅実な経営を続けていました。76歳の社長と経理・事務担当の子女お2人が、同社を切り盛りしていましたが、事業承継については未着手の状態でした。平成23年の夏に社長が不慮の事故で急逝したことにより、次女が代表者となりました。しかし、新社長は建材販売事業に直接携わっていなかったことから、同事業を長期に亘り維持することは難しいと判断し、事業の方向性について甲社の顧問税理士に相談しました。その後同税理士からの紹介により、当金庫は事業承継の方法についてご相談をお受けしました。
 当金庫では、不動産管理業を甲社に継続させる旨の意向に基づき、建材販売事業を『事業譲渡』の方法で「第三者へ譲渡する場合」と「従業員へ譲渡する場合」の手順、可能性および留意点等について新社長ご説明し、併せて同事業の概算評価額を提示しました。
 その後、前社長の下で建材販売部門の管理業務を行っていた従業員が同事業を承継する意思を強く示したことで、承継にあたって後継従業員の負担を極力軽減した形で事業譲渡を行いたい旨の申出が新社長よりありました。これを踏まえ、当金庫および顧問税理士は、「後継従業員を代表者として設立する会社への事業譲渡」を提案、その実現のために会社法で定められている手順を示すと共に、事業譲渡契約書他の必要書類(案)の作成等をサポートしました。
 こうして、平成23年10月に新会社への事業譲渡契約を締結する運びとなりました。第三者へのM&Aは、親族や従業員への事業承継が叶わない場合の解決方法です。本件は、事業の存続と従業員の雇用を最優先に考えた創業者のご親族が、従業員の事業承継への決断に応えることで実現した好事例と言えます。