事例-29

平成27年1月

 甲社(建設業)が、事業拡大戦略としてM&Aを選択し、甲信越地方の同業者(乙社)の株式を100%取得しました。

  乙社(本社:甲信越地方)は、創業50年以上の業歴があり、地元有力企業としての評価を確立していましたが、 同社A社長が80才を超えても後継者が決まらずに自社事業の将来を憂慮していました。 会社清算も今後における選択肢の一つと して視野に入れていたところ、M&Aによる会社譲渡の可能性を聞いたA社長は、約3年前に取引先の信用金庫を通じて信金キャ ピタル㈱*にM&A仲介を依頼しました。
  信金キャピタル㈱は、乙社の近隣地域の関連事業者から候補企業をリストアップして順次提案を始めましたが、成約に至る相手は現れませんでした。
  当金庫では、平成25年7月に信金キャピタル㈱から、買い手候補企業の紹介を依頼され、乙社を引受ける力があると思われる取引先数社に打診したところ、甲社が興味を示しました。甲社は、乙社との提携による相乗効果や、誠実・堅実な社風等に好印象を抱きながらも、初めてのM&Aでありリスクが計り知れない点、及び乙社は遠方であり経営・営業を引き継ぐ甲社人材を直ちに派遣できない点、並びに2020年東京オリンピック後における業況の見通しが不明な点等の理由から、甲社B社長は慎重に検討を進めました。これらを踏まえ、甲社の要望事項として乙社に仕事を発注して、営業対応や技術力等の感触を確かめたあとの平成26年9月より本格的なM&A成約への交渉がスタートしました。
  乙社を永続的に経営する責任を重く受け止めた甲社が乙社に要望する内容については、厳しいものも含まれていましたが、従業員の雇用継続及び会社の存続が最重要と考える乙社A社長の決断により無事契約を迎えることができました。
  譲受側がその責任と真摯に向きあったこと、譲渡側がM&Aに期待する優先条件が明確であったことが成約の要因となった事案です。
  なお、本件は中小企業間M&Aの好事例として、後日、日本経済新聞等に掲載されました。

 *信金キャピタル㈱:信用金庫のセントラルバンクである信金中央金庫の100%出資子会社。
 全国の信用金庫からの情報を基にVC業務、M&A仲介業務を行っている。